書類を電子化するってペーパーレスとは違うの?

スキャニングによる書類の電子化と関連して、「ペーパーレス」という事もよく聞きますが、これは同じものでしょうか? それとも違うものでしょうか? これははっきり定義してきれいに分けられるものではないのですが、目的と現場の違いから、大きく分けることができます。

現場別スキャンニングの2つの形

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スキャナーを使って紙の書類を少なくしたいというのは、概ね2つの方向性があります。1つ目はペーパーレスで、2つ目は必要な書類の電子化です。

ペーパーレスとは

ペーパーレスとは報告書などの書類を電子化し、紙を使用しないようにすることで、情報のやりとりの効率化と紙の節約が目的です。ここで実務的に大切なのは、「整理」「整頓」という2つの考え方にまとめられ、さらにペーパーレス実施後も、ペーパーレス化された状態を継続するため、PDCAサイクルで運用していきます。ペーパーレスはただやみくもに紙のファイルをスキャンしてファイルにすればよいというものではなく、むしろそれは手段の一つであって、会社レベルでの情報に対する考え方や手続きそのものを整理していくというのがペーパーレスといえます。

最初に想定するのは、ただ雑多な書類が混在していて、必要な書類が取り出せない状態です。要不要も誰が作ったのかもなぜ保存しているのかも分かりません。だから必要な書類を取り出すことも難しいです。
この状況を改善するために、まずは不要な書類を処分し、書類を種類ごとに分けていきます。これでかなりすっきりします。多くの場合ここ止まりなのですが、この状態はやがて最初の混乱状態に戻っていきます。ルールが決まっていないからです。処分をすることで、処分の際のルールができていきます。これを抽出するのが目的です。
その次に、必要な書類をファイリングします。なぜ必要なのか、いつ必要なのか、いつまで必要なのか、が分かるとそれをどのように分類すればよいかが自ずと分かってきます。それが書類の運用ルールというものなので、後はそれを形にするだけです。
そして最後に整頓します。適切な運用ルールを具現化したファイルとその入れ物ができたわけですので、それを適切な収納スペースに入れます。このとき、収納スペースは有限であるということを逆手に取って廃棄量を決めます。例えばA4の書類を積み重ねて1.5メートルの高さになったので、これを1.5FM(ファイルメーカー)と定義します。こうして書類量が定量化されると、廃棄量も定量化されることになります。中身と量が分かれば、適切な廃棄方法が分かります。
以上がペーパーレスを進めていく過程になります。このステップが先になって、後から適宜オプションの一つとしてスキャニングによる紙原稿の電子化という話になります。

必要な書類の電子化

全社レベルの理念が大切なペーパーレスに対して、もう一つの方向性は、現場の要請によるものです。
例えば建設業の現場では、業界の特質上様々な資料が必然的に発生します。製本図面やトレーシングペーパーや青焼きなどです。紙ですらないマイクロフィルムの場合もありますが、意味としては同じでしょう。これらはかさばるし持ち運びが大変です。そして1部しかないとすればある人が使っている間は他の人はその書類を参照できないというロック問題が発生します。また現場で使うその書類を破損したり紛失したりするリスクがあります。これらを回避するためには余分に何部か作っておくということになるのですが、それはそのまま書類の量を増やします。また、事務所が複数箇所ある場合はそのかさばる書類のコピーを配布しなければいけません。これも書類の量を増やします。そしてさらに契約書や構造計算書は保管義務のある書類になります。これのためのスペースも用意しなければなりません。

製造業の現場も同じような問題が発生します。まず図面は大判のものが多く、紙の種類、サイズ、形状もさまざまで、保管が難しく持ち運びも大変です。CADなどで電子ファイル化されていれば良いのですが、そうではないものや保管義務のある書類も多いでしょう。また、災害時に破損したりして企業存続そのものに関わるような重大事にもなりかねません。(これをBCP対策と言います。)

現場レベルの必要書類の電子化には特殊な技術が必要

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ペーパーレスに必要なのは会社としての方向性でありトップの意思や動機づけが必要になります。今までなあなあの状態で埋もれていた現場の知識・知恵を見える化しようというのが本来の趣旨なので、こういうのはトップの支援がないと中折れしてしまいます。別の角度から見ると、機材という点では大きな設備や配慮は必要ありません。
それに対して、必要な書類の電子化では現場のカイゼンが目的となり、直接の受益者である現場からの支援が必要になります。でもこれは技術的に見るとやや厄介な問題をはらんでいます。機材や技術に特殊なものが必要になってくるからです。

スキャナーは古くからあるコンピュータ周辺機器です。プリンターや複合機と一体化してきたのも最近の話ではないので、紙の書類の電子化がスキャナーの問題だというのならば、もうすでに電子化されているでしょう。そもそもファイルを電子化するのに紙をスキャンするのは、全体で見ればむしろ最後の手段というべきであって、入力の段階で申請書などに紙を使わないとか、CADのファイルでやりとりをするとか、そういったことももうトライされてきたでしょうし、これはむしろインターネット黎明期や、もしかするとその前のOA化と言っていた頃の課題でした。しかし、それでもなおかつ解決していないのならば、そこには違う問題があるということです。

その問題とは具体的にどういうものでしょうか。

サイズが多様

普及しているスキャナーは通常はA4からB4サイズまでで、複合機などで大きめであってもA3までが多いでしょう。これは仕方のないことで、図面を扱わないような仕事ではこれ以上のサイズの紙を使うことはめったに無いからです。しかし、建設業や製造業など図面を扱う仕事ではこれ以上の大きなサイズもよく使いますし、そしてそれこそがいちばん大切な、それが入っていないのならば電子化する意味がないようなドキュメント(図面)だったりします。
これを解決するには大判スキャナーを使えば良いのですが、これは専門的な機材となるために価格が高く、読み取り速度の遅い廉価版の機材でも数十万円します。

種類が多様

資料は紙だけとは限りません。マイクロフィルムや写真の場合もあります。これらをスキャンしようとするとそれ専用の機材が必要となります。

原本を社外に持ち出しできない

新製品の設計図などは通常は持ち出し不可です。また個人情報に関わることなので社外に持ち出せないという場合もあるでしょう。では自社内で取り組もうとすると、機材が特殊であることの問題や、作業量が重くのしかかってきます。

問題の解決

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これらの問題を解決するには、スキャニング作業のアウトソーシングが向いています。
読み取るべき書類のサイズがまちまちで種類も様々でありスキャンニングに特殊な機材が必要であるという場合は、そういう機材は自社で持つよりも、レンタルをするほうが合理的です。そして、量によりますが、機材だけレンタルして作業は社内でするよりも、作業ごとアウトソーシングしてしまうほうが結局安くつくでしょう。
しかしその際の問題は、書類の種類によっては社外持ち出しができないということでしょう。アウトソーシング会社の中には、出張読み取り作業に対応している会社もありますので、そういったところを探してみてください。